About Paradigm Shift

3.必要なパラダイムシフトは何なのか

医療

●単独因子疾患への対応から多因子疾患への対応へ
 単一の病原体や単一の遺伝子変異によって起きる疾病に、創薬で対処する方法論は確立されました。一方で、その開発費用が莫大なものになってきており、高齢化する世界での持続可能性には黄信号が灯っています。また、多くの要因によるエピゲノム修飾の蓄積で起きる疾病に関しては、全く別個の方法論が必要とされています。私たちは、多くの多因子疾患に共通する経路としての慢性炎症に解決の糸口を見出しています。

●不可逆的病期での介入から可逆的病期での介入へ
 エピゲノム修飾の蓄積が臨界点を超えて、病気が発症してしまうと、対症療法が主となり、その医療は患者への恩恵に比べ身体的・経済的な負担が大きくなります。しかし、可逆的病期での介入なら患者への負担が少なくて済みます。

産業構造

●社会が負担可能な費用で先制・予防を提供へ
 生じてしまった症状を消したり和らげたりするために高額な費用を払ってもらうという現在の構造は持続不可能です。社会全体が持続的に負担可能な費用で、症状を生じないようにする方法論の確立にこそ、新たな可能性が広がっています。その方法論が確立されれば、現在の方法論と比べて、費用対効果の面から圧倒的に有利になります。

保険

●健康への動機づけと民間保険の活用を
 発症してしまったものへの対応を公的に費用負担するという国民皆保険の仕組みは限界に近づいています。健康な状態を続けることへのインセンティブを制度の中に盛り込む必要がありますし、またその実効性を高めるような創意工夫は、全国一律を保証しないでもよい民間の試行錯誤からしか生まれません。

技術探索

●仮説検証型から網羅的解析型へ
 今までは、データを集める能力、それを解析する能力の限界から、仮説を立てて検証する形でしか研究を進めることはできませんでした。しかしIoT技術の発展、コンピュータの能力向上に伴い、網羅的にデータを集めた上で、その中から現実の背後に隠れている自然原理を探すことができるようになりました。とは言え、徒手空拳では見つかるものも見つかりません。私たちは、慢性炎症とエピゲノム修飾の蓄積に特に注目しています。

ヘルスケア

●医療との分断をシームレスに
 現在は分断のある医療とヘルスケアの間がシームレスにならなければなりません。個々人の情報が大量に集まることで、エビデンスも大量に見出だされ、やがてヘルスケアの領域までシームレスに覆うようになります。それによって、ヘルスケアもエビデンスに基づくものとなり、各個人が根拠を持って選択可能になります。そして参加型ヘルスケアが実現されます。

そして高付加価値の新産業群が誕生する

 これらのパラダイムシフトの過程では、既存産業の在り方が変革され、高付加価値の新産業が必然的に数多く誕生します。

並列して加速するパラダイムシフト・チェーン